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GUIDE

動線分析とは?
店舗で使う方法とツールの選び方

動線分析は「お客さんが店内をどう歩いたか」を可視化する手法です。 ただ、線を引いた図を眺めるだけでは何も変わりません。 どの数字を見れば売場の判断ができるのか、そのためにどの取得方法を選べばいいのかを整理しました。

最終更新:2026年9月2日/株式会社vartique

店舗の売場を俯瞰し、買い物客が歩いた動線を光る線で可視化した画面
動線分析のイメージ。入口から奥へ向かう線の流れと、棚の前で足が止まっている場所が見えます。

1. 動線分析とは

店舗や施設の中を、お客さんがどの順路で歩き、どこで足を止めたかを計測して可視化することです。 小売の売場改善、工場や倉庫の作業導線の見直し、展示会のブース配置検討などで使われます。

よく混同されますが、「動線」と「導線」は別の言葉です。 動線は実際にお客さんが歩いた線、導線は運営側が歩かせたい線を指します。 動線分析の役目は、「歩かせたかった線」と「実際に歩かれた線」のズレを見つけることです。 ズレがなければ、それ以上いじる必要はありません。

売場を歩く買い物客を一人ずつ枠で検出し、通路の動線を線で追跡している画面
人物を一人ずつ検出して軌跡を追った例。線が集まっている通路と、ほとんど通られていない通路が分かります。

2. 動線分析でわかる4つの数字

動線の図そのものより、そこから出る数字のほうが判断に使えます。押さえるべきは次の4つです。

立寄り率 = 立ち止まった人 ÷ 通った人

その売場は、素通りされているか

前を通る人が多いのに立寄り率が低ければ、商品ではなく見せ方(POP・什器・高さ)の問題です。逆に立寄り率が高いのに売れていなければ、価格や品揃えの問題に切り分けられます。

滞在時間

どれだけ検討されているか

立ち止まってから離れるまでの秒数です。長いのに買われていない棚は、迷って決められていない可能性があります。比較情報を足す判断につながります。

回遊率 = 訪れた区画数 ÷ 全区画数

店の奥まで届いているか

入口付近で完結しているのか、奥まで回っているのか。回遊率が低ければ、奥へ引く仕掛け(目玉商品の配置、通路幅、視線の抜け)の検討材料になります。

通過人数の方向別内訳

どちら向きに流れているか

同じ通路でも、往路と復路で見られる面は違います。方向別に数えると、棚のどちら側の面に主力を置くべきかが決まります。入口の送客数の把握にも使えます。

最初に測るなら、立寄り率をおすすめします。 「通行量」だけを見ても打ち手が決まりませんが、通行量と立ち止まりの両方があれば、 分母と分子で切り分けられるからです。人が来ていないのか、来ているのに素通りされているのか。 この2つは対策がまったく違います。

3. 取得方法4つの比較

方法位置の細かさ対象強み弱み
カメラ映像のAI解析 数十cm単位(棚の前かどうかが分かる) 映っている人全員 立寄り率・滞在時間・ヒートマップまで一度に取れる。既設の防犯カメラを使える場合がある 画角の外は測れない。広い店舗は台数が必要
Wi-Fi・BLE(ビーコン) 数m単位 電波をONにしている端末のみ 広いフロアを少ない機器でカバーできる 取りこぼしが大きい。棚単位の判断には粗い
会員アプリの位置情報 数m単位 アプリ利用者のみ 購買履歴と結びつけられる アプリ会員に偏る。新規客の動きは見えない
目視観察(追跡調査) 細かい 調査対象者のみ 迷った・手に取って戻した等、機械では取れない行動が拾える サンプル数が少なく、継続できない

棚単位・売場単位の判断をしたいなら、実務上はカメラ方式が選ばれます。 理由は位置の細かさよりも、スマホを持っているかどうかに関係なく全員が対象になることのほうが大きいです。 Wi-Fi方式で「立寄り率30%」と出ても、それは端末をONにしている人の中での30%であって、来店客全体の30%ではありません。

4. 売場改善への使い方(4ステップ)

  1. いまの状態を測る(ベースライン)。曜日と時間帯を決めて、同じ条件で1週間分ほど記録します。ここを省くと、あとで「良くなったか」が言えなくなります。
  2. ズレを探す。通行量は多いのに立寄り率が低い棚、誰も通っていない通路、想定と逆向きに流れている動線。ヒートマップで青いままの区画が候補です。
  3. ひとつだけ変える。什器の向き、POPの高さ、主力商品の位置。同時に複数変えると、どれが効いたか分からなくなります。
  4. 同じ条件でもう一度測る。曜日・時間帯・天候をそろえて比較します。効かなければ戻す。これを繰り返せる状態になったことが、動線分析を入れた本当の成果です。
ショッピングモールの売場を天井カメラから俯瞰し、棚の前の滞留をヒートマップで表示した画面
滞留ヒートマップの例。赤い場所は足が止まっている場所、青いままの場所は通過されているだけの場所です。
ヒートマップの読み方の注意。 赤い=良い、ではありません。レジ前や通路の狭い場所が赤いのは、単に混雑・停滞を意味している場合があります。 「売りたい場所が赤いか」「詰まってほしくない場所が赤くないか」の2つを分けて見てください。

5. ツールの選び方チェックリスト

6. 費用の考え方

動線分析の費用は、カメラ台数 × 解析の常時性 × 出力の作り込みでほぼ決まります。 人数カウントだけの簡易サービスは月額を公開している事業者もありますが、 動線やヒートマップ、複数カメラをまたぐ追跡まで含む構成は個別見積もりが一般的です。

見積もりを比較するときは、初期費用(機器・設置・エリア設定)と継続費用(ライセンス・クラウド)を必ず分けて出してもらってください。 安く見える提案が、実は3年総額では高いということが起きます。

7. よくある質問

小さな店舗でも動線分析はできますか?

できます。むしろカメラ1台で店内の大部分が入るため、費用対効果は良くなります。売場が数区画であれば、エリアを3〜4つに区切るだけでも立寄り率と滞在時間が取れます。

既設の防犯カメラをそのまま使えますか?

使える場合が多いです。斜め俯瞰で人物の全身がある程度写っていれば解析できます。まず実際の映像を1本確認して、どこまで取れるかを見てから判断するのが確実です。

顔や個人が記録されますか?

個人を特定する必要はありません。人物の位置と動きだけで集計する構成にでき、解析を端末内で完結させれば映像を外部へ送信しません。残るのは人数・滞在時間・通過数といった数値データです。

どれくらいの期間、測れば判断できますか?

曜日による差が大きいため、最低でも1週間分は取ることをおすすめします。イベントやセールの効果を見る場合は、実施前の同じ曜日・時間帯のデータが比較対象として必要です。

POSの売上データと突き合わせられますか?

できます。エリア別の立寄り数・滞在時間をCSVで出力できるため、同じ時間帯の売上と並べれば、立ち寄られているのに売れていない売場を特定できます。

複数の店舗をまとめて比較できますか?

できます。同じエリア定義と同じ集計単位でそろえれば、店舗間で立寄り率や回遊率を比較できます。ただし、カメラの高さや画角が違うと数値がズレるため、設置条件をそろえることが前提です。